ギャラリー招山ーGallery SHOUZANー

Column
招山由比ガ浜

作り手の思いを届けるために、

手にとって、みていただけることが、何よりと思います。自然の光のなかで、

鎌倉の山と海、作り手の思いを届けるふたつのギャラリー

招山由比ガ浜

鎌倉山の頂上付近、遠くに海を一望するYAMAギャラリー招山、海岸からすぐの路地裏に潜んでいるUMIギャラリー招山、さまざまな暮らしの道具を展示しているギャラリーで、常設展示のほかに、陶芸、木工、絵画、染色や布といった作家さんの作品や、海外の手仕事の数々を展示しています。空に近いギャラリーと海に近いギャラリー、ふたつとも自然光にあふれ、展示されている作品を輝かせています。そのせいか、訪れるたびに日常から解き放たれる気がして、心が落ち着くのです。それぞれのギャラリーを訪れ、その秘密を探ってみました。

■UMIギャラリー招山 ~画家のオーラ漂う静謐な空間~

鎌倉のメインストリート若宮大路を海に向かって歩いていると、海辺の町独特の開放感で気分が高揚してきます。それが由比ヶ浜の手前、路地を折れると打って変わった静けさです。先にはうっそうとした緑の空間、洋画家朝井閑右衛門が生前に住んでいたというアトリエ兼住居が見えてきます。

招山由比ガ浜

 

入り口にたたずむのは小さな古民家、入り口には年代物のガラス戸、奥の庭の緑がゆらゆらと見通せます。板塀に鉄製のロゴで招山と書かれ、ここが、衣食住に関連する道具やアーティストの作品を展示するUMIギャラリー招山です。

 

洋画家
朝井閑右衛門のアトリエは年に何回か公開される

奥にはうっそうとした緑の庭、巨木が自由に枝を張り、その向こうに母屋が構えています。「アトリエだけでなく、住居や庭も画家の作品の一部」と、遺言により手を加えることを禁じられているそうで、今なお画家のオーラが漂っているような不思議な空間です。

■中央アジアの手仕事に魅せられて

 

 

 

 

 

 

渡邊さんは、若いころはテキスタイルデザイナーとして働いていました。そこで中央アジアの布に出会い、すっかり魅せられました。遊牧民の女性達によって織られたキリムや絨毯、民族衣装やアクセサリ、スザニ(刺繍布)、描かれているのは子孫繁栄をモチーフとした幾何学的な文様、独創的な花々や唐草模様、ふんだんに使われるビビッドな赤と大胆な色使い、自分では絶対に描くことができないと思った渡邊さんは現地を訪ねたのです。

 

■本物を見て、良い物を手に入れて

 

 

 

 

旧ソ連領のウズベキスタンやトルクメニスタン、トルコのイスタンブールのバザールを訪れ、最初は嬉々として見て回った渡邊さんでしたが、あまりにも豊富な手仕事の技、種類の多さに、何が良いのかまったく分からなくなったといいます。そんな時に出会ったのがトルコ人の卸売商のマイクでした。何がよい品物なのか、天然素材や染料と表示があるがそれは本当なのか、彼は現物を見せながら品物の見方を丁寧に説明してくれ、目からうろこが落ちるように善し悪しが分かるようになりました。それぞれの模様の意味も分かるようになり、たとえば幾何学模様な連なるエリンベリンデは女性の女神、種が多いザクロは子宝、サソリのモチーフはサソリよけとか、ますます虜になった渡邊さんは有り金をはたいて、芸術性の高い作品を持ち帰ってきたのです。

■自分たちのギャラリーを、海を望む高台に

「作品を展示してみないか」、そう声をかけられたのが最初でした。それ以来、やはり中央アジアの布に興味を持っていた夫とともに2人で現地に赴き買い付けし、さまざまな場所を借りて展示販売していましたが、自分たちのギャラリーが欲しいと作ったのが、自宅に併設したYAMAギャラリー招山でした。

招山YAMA 鎌倉山

招山YAMA 鎌倉山

■作り手と使う人、それぞれにリピータを呼び寄せる魅力

「良い作品が作れる人は、やはり人間として信頼してお付き合いできる人」という渡邊さん、作家さんとの個人的なつきあいをとても大切にしています。その結果として、「招山にいらっしゃるのを目的にしていただけるような展示をそろえる」ことができるのでしょう。だからこそ、決して交通の便が良いとはいえない2つのギャラリーは、どちらもオープンからお客さんが途切れることなく続いています。

招山UMI 由比ガ浜

そして、繰り返し招山を訪ねたいと思うのは、たぶん物との出会いだけでなく、光あふれる空間に止まってしまったかのような時間、そこには作り手のエネルギーが凝縮し、見る人の身体に流れこんでくる気がするからではないかと思います。そしてその凜とした空間を支えているのが、控えめでさりげない渡邊さんの気配り。展示する作家さんも、それを求める使い手も、リピータが多いのもうなずけます。

「手にとって、みていただけることが、何よりと思います。自然の光のなかで」、それは作品を作り続ける作家さんのパワーを、使ってくれる人に届けたいという渡邊さんの思い。そしてクールでモダンでかっこいいのに、温かくて懐かしくて癒やされる空間を演出しているのです。

招山UMI 由比ヶ浜

招山UMI 由比ヶ浜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな空間で、選び抜かれた器や布を眺めていると、

疲れた感覚が抜け落ち、心が静かになるのです。

そして、また、立ち寄りたくなるのです。

YAMA Gallery招山

248-0031 鎌倉市鎌倉山2-22-33   TEL 0467-32-1712

UMI  招山由比ガ浜

248-0014  鎌倉市由比ガ浜4-3-14   TEL 0467-55-5999

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