鎌倉⻑⾕ 旧倉庫を改築したカフェ・ブオリ(Vuori)―2―
⼭の⽋⽚を持ち帰り、⼭につながる場所でありたい
鎌倉⻑⾕、由⽐ヶ浜通りの旧倉庫を改築したカフェ、ブオリ(Vouri)。ブオリとはフィンランド語で⼭の意味です。店主の野崎咲耶⼦さんは、幼いころから家族で⼭に⾏き、結婚してからは夫と本格的な登⼭をしていました。今でも時間ができれば⼭歩きに出かけるといいます。
「⼭の匂いや⾵に、ただ包まれるために⼭に⾏きます。ブオリには、その時の記憶とつながるものを並べています」と、書棚には⼭の本が並び、古い⽔筒やランタンが飾られ、何気なくおかれた作家さんの作品には、⼭に⾃⽣しているかのように草花が活けられています。それらは⼭の⽋⽚を愛おしみ、⼤事に持ち帰ってきたかのようです。
ブオリのWeb サイトやフェイスブックにも、⼭の本からの引⽤がしばしば登場します。登⼭家としての顔をもつ哲学者、串⽥孫⼀さんの『⼭のパンセ』や、⼭⼝耀久さんの『北⼋ッ彷徨』、草野⼼平さんの「蓼科⾼原」からの⼀節は、「清冽な⾔葉が、降る⾬のように静かに⼼にしみ込み」、現代の⽣活で忘れていたものを気づかせてくます。それが居⼼地の良さにつながって、ふっと⼀息つけるのかもしれません。
店内に置かれた⼭の本の数々。右の本棚には串⽥孫⼀の⼭の⽂芸誌『アルプ』や幼いころ⽗に連れれて⼭を歩いている野崎さんの写真が飾られています。2017 年春には⼭の写真家、野川かさねさんの真展「⼭の⽋⽚」を開催、⼭の古書店books moblo からはたくさんの本が届きました。
アーティストの感性がブオリの空気と共鳴しなにかが産まれる
⼊り⼝の看板も⼭のマーク。これは野崎さん⾃⾝が描いたもの。美術教師をしていたお⽗さんの影響もあり、壁に掛けられた抽象絵画の数々は彼⼥とお⽗さんの作品です。2017 年には画家サイトウナオコさんの個展、2018 年には⼤平⾼之さんのドローイング展を開催。作品が発するにおいや⾳楽、空気がブオリの空気と共鳴し、そこに集う⼈々の記憶の奥底に眠っている何かを浮かび上がらせます。
本当においしいと思えるものを作るオリジナルデザート
ブオリのデザートは、スタッフが意⾒をだしあい作り上げたオリジナルばかりです。⼀番おいしい季節にだけ作るという苺のタルトやイチジクのタルトは数量限定。定番メニューのそば粉のガレットにもマーマレードジンジャーや塩バターキャラメルといった⼿作りのおいしさが詰まっています。
氷好きのスタッフの提案で始めた夏のかき氷は、「ほうじ茶ミルク」、「⿊糖⻨焦がし」、「酢ベリー」と試⾏錯誤の末に⽣み出された数々で、数量限定の「⽣いちごミルク」はまったく⽕を通さないフレッシュないちごがたっぷりかかり、⾏列ができるほどの⼈気です。コトコト時間をかけて煮た⽩いんげんの餡を使った「⽩いんげんミルク」は、夏にはかき氷に、冬には「⽩いおしるこ」として登場します。
コーヒーは藤沢の⾖吉さんのもの。ネルドリップで丁寧に抽出しています。鎌倉に住む⾖吉さんは客としてブオリを訪れ、ケーキを⾷べ、それにあわせ、また季節にあわせて最適な焙煎をしてくれます。
⼟物の器に注がれた⼀杯のコーヒーと素朴な味わいの⼿作りデザート、慌ただしい⽇常を少し離れて、ホッと⼀息つける空間です。
鎌倉⻑⾕ 旧倉庫を改築したカフェ・ブオリ(Vuori)―1―
vuori
1F カフェ 12:00-18:30/ ラストオーダー 18:00
2F くらしの道具店 12:00-18:00
鎌倉市長谷1-15-1 0467-23-2450
江ノ島電鉄長谷駅から徒歩4分
不定休(instagramまたはFacebookでお知らせ)
取材を終えて…
「ああ、⼭に⾏きたい」と思うとき、店内に置かれた⼭の⽋⽚によって、⼭とか、⾃然のある場所につながっていられるような気がしています。そういう意味では、ブオリは⼭と町のあいだの、麓のような存在。まだ⾃然が残り四季が感じられ鎌倉で、⼩さな暮らしによりそいがら、⾃然や⼭につながる場所であればと思っています。
だから、「鎌倉にはゆっくりできるところが少ないから、こういうお店ができてよかった」と、近所の⽅から声をかけられたときは、本当に嬉しかったです。
常設展⽰作家
陶器 村⽊雄児/増⽥勉/⽥代⾥⾒/⾼⽥⾕将宏/⽵本ゆき⼦/⼭⽥隆太郎/
ガラス 安⼟草多
銀細⼯ AKIKASARA
イベント⼀覧(2015〜2019)
20150523 増⽥勉さんと宮下敬史さんの「⽊と⼟の⼿しごと展」
20150530 ブックカーニバル〜初めて出逢う鎌倉⽂⼠〜
20150619 湘南の作家さんたちによる、節絵展
20150720 テーブルに海と花 押⾒梨⾹展 2015. 7/20(⽉)〜8/2(⽇)
20151029 ⾦継ぎユニット“うるしさん”とブオリで⾦継ぎ茶会
20151113 丸と四⾓の稜線 富⼭孝⼀(⽊⼯)/⼭⽥隆太郎(陶)⼆⼈展
20151215 ⽣きている⾨松盆栽を作るワークショップ/塩津丈洋 塩津丈洋植物研究所
20160313 春、桜盆栽をつくるワークショップ
20160403 「うるし⽇和」〜うるしさんの⽇々のうつわ展〜
20160424 「うるし、ことはじめ教室」(毎⽉)
20160514 「 初夏のふたり展 」増⽥勉(陶)/宮下敬史(⽊⼯)
20161026 「うるし、ことはじめ教室」(毎⽉)
20161119 秋⽇光々、ふたり展 ⼭⽥隆太郎(陶)/富⼭孝⼀(⽊⼯)
20170114 NAOKO SAITO Exhibition「 いいにおいがする場所 」
20170318 「⼭の⽋⽚〜⼭の本と写真展」野川かさねさんの写真
20170513 初夏、ふたり展 安⼟草多(硝⼦)/⽵本ゆき⼦(陶)
20171021 旅する、本と⾳楽
20171111 「おじさん酒場」⼭⽥真由美さんトークイベント
20171021 「旅する本と⾳楽」
20171121 増⽥ 勉陶展 〜秋冬ならでは
20180415 ⽊と漆のワークショップ〜菓⼦⽫を作る
20180922 秋の演奏会「⼟と⽩の⾊彩」
20180925 ⼤平⾼之 ドローイング展
20181117 本 と 灯り展(ガラス作家・安⼟草多)
20190327 春の演奏会「⼭⼩屋の灯り」
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